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アートピースのように一着ずつ工夫を凝らしたダウンの制作秘話

今季アウターの中でもひときわ存在感を放つASYMMETRY DOWN VEST
その唯一無二のデザインを実現するためにどのような挑戦があったのか。サンプル制作から商品化までの工程に携わった企画&生産チームに制作の裏側を聞きました。

デザインの着想―デザイナー久保

家族が住んでいることもあってよく訪れるLA
その土地の文化や空気感みたいなものが少なからずコレクションに影響を与えています。

今回のダウンベストは、LAの街で大手ブランドのダウンに身を包む人たちを見たことがきっかけでした。
どうやったらユニークで他と差別化できるか――それがデザインするうえで最も意識した点です。

規則性の中にランダムさを

以前から何度かmuller of yoshiokuboではダウンウェアを出してきたのですが、今回は“大手ダウンメーカーでは出せないデザイン”を目指しました。

ダウンウェアといえば規則的に配置したステッチが最大の特徴です。
このステッチは、中のダウンが動いたり重力で落ちたりしないよう固定する役割を果たし、機能面でもデザイン面でも重要な要素となっています。

今回挑戦したのは、この「規則性のあるダウンウェア」でいかにランダムさを表現できるか、という点。
アシンメトリーのデザインは自身のパターンのアイデンティティでもあるため、このダウンベストにも取り入れました。

縦横無尽に巡らされた紐とギャザーは、一言で表すなら「手間」。ひとつ一つのふっくらとした膨らみを出すために、想像以上の作業工程を経ています。

“muller of yoshiokubo”らしさを表現する上で大切にした要素

身体を美しく見せるシルエットとボリューム感

デザインが決定したらパターン作成、さらにトワル(試作品)でのチェック工程へと進みます。特にトワルの工程では、実際に着用して修正箇所を見つけ、より良い仕上がりを目指します。

ここではディレクターの内田と議論を重ね、女性が実際に着た際にいかに身体が美しく見えるかを何度も確認しました。
膨らみすぎないバストやウエスト周りの微調整、ステッチのバランスなど細部まで丁寧にチェックしています。

ドレスに合うネックライン

ブランドのコンセプトでもある「Dress For Daily Life
muller of yoshiokuboでは、ドレスを日常的に楽しむという提案をしています。
そのため、ドレスの上から羽織っても美しく見えるダウンベスト作りを意識しました。ネックラインは、特にこだわった部分。デコルテラインを美しく見せるため、ラウンドカットを採用しています。

スタリングの可能性

このダウンベストは前後で裾の長さが異なり、ヒップが隠れるデザインがポイントです。
アームホールも広めに設計しているため、全体的にどこかラフな雰囲気が漂います。

普段使いの中でしっかりとスタイリングが華やぐアイテム。
ドレス以外にもカジュアルなパンツからテーラリングアイテムまで、さまざまなテイストとの組み合わせを楽しんでいただけます。

独特な色展開も特徴のひとつ。
ぜひ新たなアウタースタイリングの扉を開けてみてください。

長く大切に着るということ

ASYMMETRY DOWN VESTに限らず、muller of yoshiokuboのアイテムは実際に手に取った際、「どう作っているんだろう」と思わせるようなパターンや生地、ディテールを探求しています。
これは、NYでオートクチュールを学んだ経験が活きていると感じています。
1m 7万円もする生地を裁断する際は手が震えたものです。
そうした経験を経て培った、生地への愛着やディテールの追求が今回このダウンベストでも表現されています。

究極のサステナビリティとは、ずっと長く愛着をもって着続けられる服だと考えています。このダウンベストを通して皆様にもそう感じてもらえたら嬉しいです。

デザインをカタチにするための工夫―生産チーム

 一本ずつ異なる紐の長さとギャザー分量

歪でありながら全体は端正に見えるシルエットを再現するため、左右非対称・縦横無尽に配置された紐はすべて長さが異なります。

ひとつとして同じ寸法がない紐をそれぞれカットし、所定の箇所へ間違えないように紐通しする作業は非常に手間のかかる工程です。

紐はすべて人の手で寸法を測り、ギャザーを寄せるという、一点一点職人技で仕上げられています。

中には「職人が手作業する必要があるのか?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ギャザーの分量も箇所によって異なるASYMMETRY DOWN VESTは、ダウンにステッチ入れて紐を通し、ギャザーを入れるという工程が必須の異例のデザイン。
当然難易度が高く、国内でこれを実現できる職人も限られているのです。

中綿の工夫

表地と裏地には、ダウン素材に適した撥水加工された生地を使用。
中に入れたダウンは、THINDOWNというイタリアメーカーのダウンシートを採用しています。

羽毛が均一に分散された非常に高機能な中綿により、ふっくらと軽い仕上がり特徴です。
このシート状のダウンを使用した理由は、複雑に交差した紐を配置したデザインを実現するため。従来のダウンパックでは量産も適正価格での販売も困難だったところ、ダウンシートだからこそ可能になったデザインです。

さらに表地・裏地・中綿以外に「スパンボンド」と呼ばれるシートを挟むことで、生地表面から中綿が飛び出すのを防ぐ細かな配慮もなされています。

縫製の大変さ

デザイン上、紐を通してギャザーを寄せるとなると、生地選びの段階から配慮が必要です。スムーズにギャザーを寄せられるよう、何層にも重なった生地の相性を細かく確認しました。

表からは見えませんが、何層にも重なっているため、当然生地に厚みが出ます。厚みのある生地は縫製の際にズレの原因になり、意図せずギャザーが寄ったような見た目になってしまうことも。

国内でダウンかつ、こんな複雑な縫製ができる工場はごくわずか。今回、条件に合う工場すべてにオファーをかけましたが、何件も断られてしまいました。その中で、無事一件、要望に応えてくれる工場が見つかった時のホッとした気持ちは今でも忘れません。

そして、厚みのある生地がズレないよう仮止めし、丁寧に縫製を進めていただいた結果、非常に美しい仕上がりとなりました。

日本のものづくりの素晴らしさ

一目見ただけで手が込んでいると感じるデザイン。複雑な作業工程を経ながらこの価格帯で提供できるのは、自社企画・自社生産の賜物です。
量産はしているものの、一点ずつ手で仕上げているため、アートピースのような感覚に近いかもしれません。もちろんファッション性の高いデザインなので、唯一無二の存在感を放ちます。

技術的にもコスト的にも、今後同じものを作り続けることが難しくなる可能性のある一着。ぜひこの機会に、日本の職人技が生み出した特別なダウンベストを手に取っていただけたら嬉しいです。

ASYMMETRY DOWN VEST
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